日本のクロマグロ採捕禁止について思うこと。黙っていたら何も変わらないのよ。

いま日本の釣り人の間ではクロマグロの採捕禁止が話題になっていますね。

クロマグロは絶滅危惧種に指定されており、多国間の海域をまたがり回遊する魚ですので関連各国間で協議が行われ、国ごとの漁獲枠が設定されているわけです。

最近になって絶滅危惧種から危機ランクが引き下げとなり準絶滅危惧種になりました。
国際的な資源管理は良い方向に向かっていると言えるでしょうが、問題は日本国内での漁獲枠の配分です。

クロマグロの産卵期は5月から7月です。産卵場所は日本近海に限定されます。ですが漁獲枠の6割を占める巻網漁の操業は産卵期に集中して行われているのです。

例年5月に入ると巻網漁操業開始の一報が入ります。
Yahoo Japanの記事で一般の人からのコメントを読むと、産卵期の操業に対して世間一般にずいぶんと認知され、皆が反対していることが伺えます。

しかしこの巻網漁への漁獲枠配分が減らされる気配は一向にありません。

産卵期の操業を見合わせれば資源の早期回復が見込めるにも関わらずです。

巻網漁の市場でのキロ単価は約1500円ですが、一本釣りやはえ縄漁の相場が年末にかけて1万円前後になるのに比べると著しく低いことは間違いありません。

巻網漁のマグロは市場で値がつかないものが多く、それらは相対といわれる一般にはわからない値段で取引され、ネギトロチューブやキャットフード等になると言われています。

漁獲枠配分や魚の行方などずいぶんと闇が多いわけですが、このような事実が一般に認知され、巻網漁を行う企業にマイナスイメージがつき、産卵期操業を見合わせ、漁獲枠配分の見直しを図り、資源の少ない状況下においては一本釣り、はえ縄、定置網などの小規模漁業者に多く配分されるようになることが理想だと考えます。

さらには遊漁へも最低100トンは配分してほしいと思います。
100トンとは言っても巻網漁1回の水揚げにも及びませんし漁獲枠全体1万トンのたった1%です。

また忘れてならないのは巻網の水揚げ基地である鳥取県の境港の水揚げ能力は1日70トンであり、巻網1回の操業200トンを3日かけて水揚げすることがあった事実です。

その間、魚は血抜きワタ抜きされず冷蔵設備のない魚艘に入ったままなのです。
大切な海からの恵みを何だと考えているのでしょう。

一本釣りやはえ縄で釣りあげた魚であれば船上できちんと手入れが施され、魚は高額で取引されます。

さらに考慮したいのが釣り人の経済効果です。
マグロ1本釣るのに最低2セットのリール+ロッド、多数のルアーや小物類等を揃えるとおよそ100万円は欲しいでしょう。ざっとロッド10万、リール10万以上、ルアー1個1万円はしますからね。

さらに現地へ行くまでの交通費や食費宿泊費などの滞在費用、チャーターボート代などがかかります。
中にはマイボートで釣りをする人もいるのです。
一本のマグロへの釣り人の経済効果は職漁を超えると思います。
プライスレスを求めていくわけですから。

職漁の人がいくら船や魚探、レーダーなどの装備にお金をかけているとは言っても、儲けを度外視することはできるはずがないのです。

ですのでキロ単価の低い巻網漁に漁獲枠を多く割いている現状は、経済的合理性を著しく欠いていると言わざるを得ません。

アメリカでは遊漁の経済効果が職漁の13倍と算出され、国を挙げてスポーツフィッシングを振興しています。

同じ太平洋クロマグロですが、日本の遊漁は20トンで採捕禁止となり、米国では300トンを超えてもストップがかかることがありません。
1人1日2本のバッグリミットが認められているからです。

さらにキャッチアンドリリースでの釣りは水揚げに含まれないので、枠がいっぱいになったとしても釣りは続けることができます。
アイルランドでは大西洋クロマグロの商業的な漁獲枠自体がない中で、キャッチアンドリリースでの遊漁が成立しています。

でも日本の釣り人のなかには変に騒ぐと来年の漁獲枠がなくなるかもしれないから何も言わない方がいい、なんて人がいるんですね。私には信じられません。

昨日の朝日新聞の夕刊にクロマグロ遊漁中止に関しての記事が載りましたが、釣り人に寄り添った内容で溜飲を下げるものでした。

世間にスポーツフィッシングがもっと認められ、経済的合理性の面で遊漁が職漁よりも優っている事実も同時に認知されることを願ってやみません。


コメント

タイトルとURLをコピーしました