オーストラリアシドニーウーバー チャイナタウンより真心をこめて運ぶ。

ある金曜日の夕方、シティのチャイナタウンでリクエストを受ける。
Sussex streetを南に下りきったところにはHarbour streetに抜ける細い一方通行の路地がある。
チャイナタウンのモールを突っ切るこの通りは中華街の店に品物を卸す商用車が主に利用するのだが、Sussexどん突きの路面電車と交差するところが混むので自分はここを通り抜けることが多い。
ピックアップポイントはこの細い路地なのだった。

場所近くにきてもそれらしき人がいない。ゆっくりとクルマを進めていると、交差点近くまで来たところで突然左後部のドアが開かれる。
マスクをつけた若いアジア人の女性が小さな紙の手提げ袋を後部座席に置きドアを閉めようとする。付け加えるとコロナ禍以前の話である。マスクはたぶん面が割れないようにしているのだ。
助手席のウィンドウ越しにWhat’s the contents?(何が入ってるんだ)と訊くが何も言わずそのまま立ち去ってしまう。アプリが示す行き先はManlyだ。

「どうしたものか」車の中で目的地に向かいながら考える。
たぶん、いや間違いなく、自分はいま運び屋になっているのだ。

Neutral Bay付近で渋滞のなか幾度か手を伸ばし荷物の中身を確かめたい衝動にかられる。
けれどここで中身が何かわかってしまったらもっと大事になってしまうかもしれない。
何も知らなければNone of my business(オレには関係ない)でやり過ごせるのではないか。
出した結論は触らぬ神に祟りなし、袋をいじらないことだった。

ManlyはNorthern Beachesと呼ばれるシドニー北部に連続するビーチの中では一番シティ寄りに位置する。観光客はそれなりに多いのだが、この辺の住民は静かな生活を望んでいるようで鉄道は通っていない。交通の便が良くなって観光客がさらに押し寄せるのは厭なのである。よって現状では公共の交通機関はバスとフェリーだけでありManlyから北はバスだけに限られる。
ウーバーでの朝夕は、フェリーの発着場へ、また発着場からの送迎がやたらと多い。ほとんどが近距離で夕方など発着所へのとんぼ返りが2、3回ほど続く。さすがにやってられないのでそんな時はアプリをオフにしてMosmanへ向かうことにしている。

Manlyの市街地に入り、到着地では眼鏡をかけた若い男性がこちらに手を挙げて合図をする。
自分は何ごともなかったように極力爽やかな笑顔で後部座席を親指で示すと、男はドアを開けて荷物を受け取る。
クルマを発進させるとすぐアプリに着信があった。5ドルのチップをもらえたのである。

ありがとういい人じゃないか。廃人にならない程度にたのしんでちょうだい。

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